1面トップ 公示地価、都心部バブル期上回る、低金利と減税が需要下支え

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国土交通省は1月1日時点の公示地価を発表した。全国の地価変動率は昨年マイナス0.2%だった住宅地が9年ぶりに下げ止まった。全用途平均と商業地は2年連続で上昇した。住宅地は札幌、仙台、広島、福岡の地方4市が昨年の2.3%から2.8%に上昇幅を広げた。三大都市圏は昨年同様0.5%と小幅な上昇となった。商業地は地方4市が6.9%に上昇幅を拡大したのをはじめ、総じて上昇基調を強めている。国内で地価が最も高かったのは11年連続で東京・銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」で1平方メートル当たり5050万円となって公示地価として過去最高を更新した。
主要都市圏は住宅地が前年並みの小幅な上昇を続け、商業地は上昇傾向が強まった。低金利政策や住宅ローン減税策による需要の下支え効果により住宅地は底堅い。商業地は訪日客の増加などを受け店舗やホテル需要の高まりに加えて再開発事業の進展とオフィスビルの空室率低下に伴う収益性の向上が反映された。
住宅地の全国上昇率トップ10を見ると、東京・南麻布が5位にランクインし、7位に福島県、10位に福岡県の地点が入ったほかは宮城県の地点が占めた。商業地の上昇率上位は、大阪の地点が1~5位までを独占し、1位の道頓堀のづぼらやでは訪日客の急増で41.3%の上昇を見せた。

■東京圏/旺盛な投資意欲が衰えず/住宅・商業物件とも二極化鮮明

東京圏を見ると、住宅地は都内23区で3.0%上昇した。「マンション好立地のキャップレートは低い。事業化が可能な主要駅周辺エリアもあるものの基本的に郊外は事業化が難しいのが実情だ」(不動産大手)との声が支配しており、特徴を欠くマンションの需要に一服感が漂っている。
「東京都区部の新築は高くて手が出ない」。消費者のこうした反応を実感し、今後の分譲価格の調整を予想する専門家も少なくない。東京カンテイは、「新築の分譲価格は上下動や横ばいを繰り返し、場所によって10%程度の調整で物件購入意欲を刺激する策を取ることも考えられる」と指摘する。みずほ証券の石澤卓志上級研究員も「価格が上がり過ぎて売れ行きが悪くなった。サラリーマンの購買能力を超えた東京23区は価格調整が必要になる」と話す。
ただ急降下するわけではない。新築の高止まりを受けて割安の中古に消費者の目は向かいやすい。中古マンション価格が2割アップしている地域では、住み替え先のマンション価格が高くても売却益がそれを吸収することで中古住宅の流通が加速しそうだ。東京カンテイの井出武上席主任研究員はそう指摘し、「17年の中古流通事例数は昨年の42万件の水準を上回るのでは……」と見通す。
一方で購入をためらう実需層と違い、投資家の意欲は旺盛だ。長期国債との利回り差であるイールドギャップが取れているため警戒感は薄く、投資家による低利回りの取引が当面続きそうだ。
不動産のプロ以外の取得意欲も強く、特に相続ニーズでは「アパートが竣工する前に売れてしまい物件が追いつかない」(仲介会社)といった状況だ。中古車販売店が相場を無視して土地代を引き上げたケースが見られたとの声も聞かれる。
東京の商業地は23区で5.5%上昇し、全ての行政区で上がり上昇幅も拡大した地点が多い。特に銀座エリアでは、訪日客の増加と再開発事業などが進んでいることから店舗賃料の上昇が地価を押し上げた。上昇率トップ10には、いずれも銀座が8~10位にランクインした。土地総合研究所の「不動産業業況等調査結果」によると、昨年10月時点でビル賃貸業の業況指数は、10期連続でプラス水準を維持している。
ビル賃料も上昇傾向が続く。ソニー銀行は千代田区で開発中の「(仮称)内幸町二丁目プロジェクト」に来年1月末をめどに移転する。足元のビル賃貸需要は業容拡大に伴う人員増に向けたポジティブなケースが多く、強気の賃料設定も目立つ。
この1~2年で竣工が相次いだ日本橋のビル賃料は坪4万円前後と周辺相場の倍近い成約が少なくない。賃貸需要が見込めたり、インバウンド効果が期待できる地域への資金流入が進んでいるが「Aクラスビルには品不足感が強く長期使用の目的が多い。Bクラス以下になるとフリーレントを付けての誘致も見られる」(仲介大手)といった二極化が進展している。

■大阪圏/外需で商業地4割上昇/タワーマンション、ホテル活況

大阪圏の地価上昇をけん引するのは都心部だ。マンション用地やホテル開発用地需要が強いことに加え、訪日外国人旅行者の増加もあってホテルや店舗需要も強い。
全国でもっとも高い41.3%の上昇を示した大阪道頓堀。旺盛な宿泊需要を背景にホテルは高稼働で、客室単価も高水準にある。賃貸マンション開発業者と競うようにホテル開発事業者が用地を物色、資金調達環境が良好なことも背景に積極的な土地投資が続く。
観光庁の統計によると大阪府の客室稼働率は84.1%(16年)と全国で最も高い。昨年1年間だけでも東横インやスーパーホテルなど全国チェーンのビジネスホテルが10棟以上オープン。今年もJR西日本グループによる大阪駅、天王寺駅周辺の2つの宿泊特化型ホテル、アパグループの本町駅近くのビジネスホテル、NTT都市開発によるユニバーサル・スタジオ・ジャパンに近い駅直結ホテル複合施設、朝日新聞社らによる中之島でのコンラッド大阪など10棟の開業が予定されている。相鉄インの心斎橋など関西圏集中出店やコスモスイニシアはファミリー・グループ向けホテルなど新たな計画も続々と明らかになった。
商業施設も高稼働が続く。シービーアールイーによると、梅田茶屋町エリアでは引き合いが特に強く、高額賃料で決まる事例が目立つ。心斎橋エリアは、ドラッグストアやスポーツブランドがけん引する。15年半ばまでは1坪当たり20万円だったプライム賃料は、16年後半は30万円で推移している。特に長堀橋の南から道頓堀周辺の心斎橋筋商店街では、上層階を含めてテナント退出の埋め戻しに時間がかからない状況だという。
分譲マンション市場は都心部のタワーマンションが地価上昇をけん引する。不動産経済研究所によると16年の大阪市部の発売戸数は前年を15.1%上回る8217戸だった。大阪市部の発売が増えた一方、大阪府下、神戸市部、兵庫県下などは減少したこともあって初月契約率は前年よりもやや高い71.9%だった。
東急不動産らが分譲中の地上38階建て分譲マンション「ブランズタワー御堂筋本町」(総戸数276戸)は地下鉄各線本町駅直結の利便性や最上階に設けた共用施設に加え、地区計画による御堂筋エリアの住宅制限による希少性などから販売は好調に推移しており、今年秋の竣工までに全戸販売を終える勢いだ。
この物件は大阪圏を中心にした地元需要がほとんどだが、ミナミ周辺ではアジア投資家による購入が目立つ物件も少なくない。外需も地価上昇の一因になっている。
都心部に限らず阪急線梅田駅から23分の御影駅周辺は、地元不動産会社が「御影は”シャネルブランド”」と呼ぶほどに地ぐらいが高く、「最近も築20年の一棟アパートを5000万円で仕入れ、6300万円で転売できた」(神戸市の仲介会社)など大阪圏域の投資需要は強含んでいる。

■仙台市 取引乏しい住宅地もアップ

仙台市は、全国の住宅地上昇率で上位10位に7地点がランクインし、そのうち6地点が一昨年12月開業の地下鉄東西線沿線に位置する若林区だった。上昇率1位の住宅地となった白萩町は薬師堂駅から徒歩4分。以下、2位と6位が連坊駅、3位と9位が卸町駅、4位が薬師堂駅からの徒歩圏内となっている。
松栄不動産社長で週刊住宅特派員の松坂卓夫氏は、若林区の上昇率の高さに「意外との印象を持った」と話す。「上昇地点は取り引きが活発なエリアではなく投資需要も低いため、ほかのエリアが上昇しているように思っていた。もともと若林区は土地価格が安かったこともあり、数区画分の宅地分譲が市場に出るたびに地元の人が殺到して、価格が高騰したのだろう」と分析する。
一方で土地区画整理事業が進む東西線の終点の荒井駅周辺では、賃貸需要がじわりと広がり始めている。地元業者は「区画整理で新しくなったことで人が流入している。1Kや1LDKの単身やカップル向けの新築に加えて、ファミリー向け2LDKを建てるオーナーも現れ始めた」と話す。
住友不動産は今月、仙台市内最大の免震タワーマンション「シティタワー長町新都心」(総戸数414戸)を竣工した。エリア最高層の地上24階建てで、3LDKを中心に73~100平方メートルを2980万~5490万円で販売した。購入者は仙台市内が7割を占めた。 広告代理店DGコミュニケーションズによると、仙台市圏の16年新築マンションの平均価格は4442万円で過去最高を更新。供給数も14年から右肩上がりだ。

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